入手杏奈さんインタビュー

来たる10月13日(金)のWA!!デビューコンサートにスペシャルゲストとしてご出演いただく、ダンサー・振付家の入手杏奈さんにダンスについて、今回の共演について、お話を伺いました。(聞き手・玉木優、8月26日実施)


入手杏奈(ダンサー・振付家)

 

桜美林大学文学部総合文化学科卒業。在学中より、コンテンポラリーダンスを木佐貫邦子に師事。2009年より、まことクラヴに参加。2011年~2016年、21世紀ゲバゲバ舞踊団の活動に参加。近年はソロ作品の発表や、音楽PVへの振付・出演、演劇作品への振付・出演、美術作家とのコラボレーション等の活動を行う。第一回ソロダンサフェスティバル2014最優秀賞受賞。桜美林大学非常勤講師。

入手 杏奈 X 流 麻二果『辻を逸れる』
@TOLOT / YUKA TSURUNO GALLERY / 2015.09.05.


~ 共演のきっかけ ~

玉木:僕が杏奈さんと初めて共演させていただいたのが、昨年夏の近藤良平さん演出のストラヴィンスキー「兵士の物語」でした。その時の杏奈さんのダンスの印象が強烈に残っていて、いつかまた共演できたらなと思っていました。今回WA!!のデビューコンサートの出演をお願いしたところ、引き受けてくださって、意外と早く実現しましたね。

入手:そうですね。「兵士の物語」のときもダンス、語り、演奏、映像など、いろんな角度から作品にアプローチする感じで、すごく面白かったですね。その時は玉木さんとゆっくりお話しするタイミングもそんななかったので、こうやってご縁が続いてとても嬉しく思っています。

玉木:いきなり連絡して驚きませんでした?(笑)

入手:びっくりするというより、嬉しかったですね。玉木さんは海外におられるし、また日本でご一緒できる機会がこんなに早くあるとは思っていなかったので。

玉木:ありがとうございます。嬉しいですね。

〜 ダンスを生み出すこと 〜

 

玉木:杏奈さんの普段の活動について教えてください。

入手:主な活動としては、ソロでの作品制作、音楽PVなどへのダンスや振り付け、子供たちのためのワークショップや、学校に派遣されてのワークショップ、あとは今年から母校の桜美林大学の講師を務めています。

 

自分が踊ることにプラスして、最近になって人に教える機会が増えてきました。これまで「教える」ことを、自分がやっていくだろうとは思っていなかったので、自分でも驚いています。手探りではありますが、与えられた使命だと思って取り組んでいます。


玉木:ダンスといっても多種多様だと思いますが、杏奈さんのダンスはどのようなものですか?

入手:ジャンルで言うと「コンテンポラリーダンス」というものにはなると思います。ただ「コンテンポラリーダンス」と言っても、本当に人によって異なるので、あくまでもくくりとしての名称だと思っています。


「コンテンポラリーダンス」と言っても、バレエ、ストリートダンス、演劇など、その人のルーツとなるものによってかなり違いがあって、簡単にはカテゴリー化できないように思います。型にはまらない、自分の自由な表現として「コンテンポラリー」と言う言葉を用いているように思います。

玉木:杏奈さんのルーツはどのような感じですか?

入手:元々大学に入るまではずっとクラシックバレエをやっていました。母校の桜美林大学文学部総合文化学科に入学して、そこでコンテンポラリーダンスに出会い、私の師匠である木佐貫邦子さんの元で学びました。

 

それまで、漠然とダンスの世界で生きていきたいとは思っていたものの、プロのバレリーナになるというのは難しいと感じていましたが、コンテンポラリーダンスに出会って、そこからズズズっとのめり込んで、今に至るという感じです。

玉木:バレエの世界とコンテンポラリーダンスの世界はかなり違いますか?

入手:厳しさと言う意味では同じだし、どちらにも面白さと大変さがあると思いますが、バレエには振り付けがあって、決まった物語があって、それが型みたいなものに繋がると思います。流派による細かな違いはあれど、大きくはそんなに変わらないように感じます。毎日基礎的なことを繰り返し訓練して、鍛錬を重ねて舞台に向かうという感じかなと思います。


コンテンポラリーダンスの場合は、自分で1から振り付けをしたり、公演や内容が変わればまたゼロから作っていくところがあって、バレエと比べると自由度が高いように感じます。

玉木:今回はトロンボーンの合奏団との共演ということですが、どのように感じてらっしゃいますか?

入手:正直まだどうなるのか、完成形は全く見えていない状態ですが、今はぼんやりとした、絵で言えばデッサンみたいな感じかなと思います。そこにどんな色を乗せていくのか、自分でも想像がつかない部分もあって、怖くもあり、楽しみでもあります。


曲やフレーズによって、音に寄り添うのか、それとも音から離れてみるのか、いろんな見せ方があると思います。ダンスが存在することで、音の聞こえ方や色彩が変化すると思うので、重要な役割だなと思います。音とダンス、お互いが影響しあって豊かになる。持ちつ持たれつの関係なんだろうなと思います。

玉木:踊りや振り付けを生み出すプロセスはどのような感じですか?

入手:踊りが生まれるときには、必ず自分の中に衝動があると思います。衝動に突き動かされて踊っている。逆に衝動がないと何も生まれてきません。今はどんなことができるかな、という段階でもありますが、どんな衝動が出てくるか待ってみる。そして、その衝動が出てきたときに、道筋のようなものが見えて、それが溢れていくような感覚、世界が広がっていくような感覚です。そこで出てくる感情や感覚で踊っていると思います。

 

でも、実際はそんな簡単にはいかないんですけどね(笑)こうしたいというのがわかっていても、そこへ到達するまでには時間がかかる。いろんなことをあれこれ試してみて結局一番初めに戻ってきたり、試行錯誤のうえ別の曲で振り付けたものを当ててみてピタッとくることもあったりして。だから、作っているときは怖いです。真っ暗なところに一旦自分を置いて、またそこから戻って来られるのか。人に見せられるクオリティーにするためには、戻ってこないといけない。大変な作業だとは思います。

玉木:ゼロから作り出すっていうのは、すごいチャレンジですね。僕らクラシック音楽の演奏家には「楽譜」という確固たるものがあって、それが地図のような役割を果たします。ですので、自分の心情に近いものとか、表現したい内容の作品を持ってきて、その作品を通して代弁するようなイメージなのかなと思います。詩の朗読とか近い部分があるかなと思います。


だから、自分の表現をまっさらなところから作り出すというのは、僕らにとっては新しい世界かもしれません。めちゃくちゃ楽しみです!

玉木:今回の曲目に関してはどうですか?

入手:せっかくの機会なので、曲ごとに自分の中でテーマや役割を決めて挑みたいなと思っています。まずはそれぞれの作品と向き合うことから始めます。曲を何度も繰り返し聞いていると、音の抑揚、激しさや優しさなど、「うねり」のようなものが見えてきます。心電図のような感じですかね。


その「うねり」に対して、自分は沿うのか、逆にかわすのか、音自体はすごく盛り上がっているけど、体は逆に静止して動かないことで力に拮抗する、とか、すごく静かな場面だけど、そこに動きを出して踊っている、とか、いろいろな可能性があると思います。

玉木:すごく興味深いです!音楽の聴き方が独特というか、音楽家にはない視点だなって思います。

〜 体ひとつを使って、何にでもなれる 〜

玉木:杏奈さんがダンスをする理由って何ですか?

入手:大学の頃までは、ただ単純に踊るのが楽しいという感覚が大きかったですが、今は少し違いますね。いつからか、ダンスが好きでやっている、というよりも使命のようなものを感じるようになりました。


自分には踊りしかないと思うし、ダンスがなければ人とのコミュニケーションも違っていたと思います。ダンスがなければ子供たちと触れ合うこともなかっただろうし、ダンスが繋いでくれた縁があるように思います。家族や友人、仲間の支えもそうです。


そういった縁があったからこそ、ここまで来られたように思います。今回の共演もそうですし、人が与えてくれるから自分が存在している、自分のダンスを必要としてくれる人がいるからこそ踊れるという部分もあります。まだまだ修行の身ではありますが、与えてもらったご縁への恩返しでもあるなと思っています。

でも、ダンス以外のことが追いつかず適当になってしまうときもあります、、。

玉木:音楽家と同じですね!


玉木:ダンスの魅力って何だと思いますか?

入手:「体ひとつを使って、何にでもなれる」っていうことかなと思います。体は本当に雄弁だなと思います。感情だけじゃなくて、情景や景色を表現したり。


ダンスを見ている人も、実際には踊っていないんだけど、その人たちの心が一緒に踊って、解放されるような。いつもそういうダンスができたらなと思っています。良い音楽を聴いた時に、音で心が解放されるような体験ってあると思います。ダンスでも、何か心に溜まっているものとか、淀んでいるものが解き放たれるというか、そういったコミュニケーションができたらいいなと思っています。


高く足が上がったりとか、早く回れたりとか、技術的な部分の幅は大切だとは思いますが、ただそこに立っているだけなのに強く心に訴えかけるというダンスもあるし、体ひとつでいろんな可能性があると思います。

〜 WA!!デビューコンサートに来られるお客さまへ 〜

玉木:最後に今回のWA!!デビューコンサートに来られるお客さまへのメッセージをお願いします。

入手:きっと今回のお客さまの中には、普段あまりダンスをご覧にならない方もいらっしゃると思います。ダンス作品の舞台とはまた違った会場の雰囲気になると思いますので、私もとても楽しみです。


すばらしい演奏を目当てに聞きに来たけど、それにプラスアルファとして踊りがあって、今回はその他いろいろな演出もあって、普通のクラシックコンサートとは全く違った楽しさがあるんじゃないかなと思います。ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。


「コンテンポラリーダンス」というと、なんだかよく分からない、難しそう、と思われがちかもしれませんが、多くの人に身近に感じてほしいですし、来られるお客さまに捧げたいと思っています。良い時間をシェアすることができたら嬉しいです。