玉木優インタビュー・WA!!ってなに?

トロンボーン合奏団WA!!代表の玉木優が、WA!!結成への思いと、

10月13日デビューコンサートに向けて意気込みを語りました。

(聞き手・下村壮平、8月28日実施)


〜 WA!!ってなに? 〜

下村:8月の情報公開から「WA!!って何?」と、実際に知り合いなどからよく聞かれるのですが、ズバリ、WA!!っていったい何ですか?

玉木:ははは(笑)ざっくりと言えば「トロンボーンの演奏を通して、音楽をひと味違った方法でお届けする」というのがコンセプトなのかなあと思います。

 

僕はこれまでトロンボーン奏者として、オーケストラや室内楽、ソロなどを通してクラシック音楽に携わってきました。僕には音楽しかないし、「クラシック音楽ほど面白いものは、他にはない!」って断言できます。だからクラシックをやってます。

 

でも残念ながら、世間一般の認識は全く違うよね。

クラシック音楽って言ったら、「面白くない」「退屈」「敷居が高い」「堅苦しい」「長すぎる」「かしこまってる」「知らない」「謎」「だから積極的に触れようとも思わない」、などと言われてしまいがちかなと思います。ヨーロッパであってもクラシック音楽を聞くのは一部の層に限られていて、流行りのポップスなんかに比べれば、とっつきにくさは否めません。

 


確かにクラシック音楽は知識を必要とする側面があるし、全く何の予備知識や経験がないお客さんに「この1時間以上に及ぶ長大で難解な交響曲を熱中して聞いてください」という方が酷なのかもしれません。そんな長い時間一体なにを聞いていれば良いのか、どんな顔をして座ってればいいのか、おしり痛くなってしまうわ、ああ、めんどくさい、って思う気持ちもわかります。

 

だから、世界中の演奏家やオーケストラが、「もっとクラシック音楽を身近に感じてもらうにはどうしたら良いのか」、試行錯誤を繰り返している現状かと思います。僕みたいな「クラシック音楽ってめちゃめちゃ面白い!」と思ってやってる身にすれば、ジレンマを感じる部分ではあります。

 

だから、音楽家が何を考え、音に何を感じて、何がそんなに楽しくてクラシック音楽に熱中しているのか。それを感じてもらえるような舞台ができたらいいんじゃないかなあって思ったんです。

下村:なるほど。それをわかってもらうことができたら、たくさんの人がクラシックにハマるかもしれませんよね。

玉木:そうだね。僕はクラシック音楽に携わると同時に、これまでいろんな種類の舞台にも足を運んできました。

シルクドソレイユやブルーマングループ、ブラストなどのショーとか、演劇やお笑いの舞台を観に行ったり、あと僕は現代アートが好きなので、世界中の現代美術館に行ったりしているんだけど、いつからか「もしかしてこれ、自分の音楽の活動にも活かせるんじゃないか?」と思うようになりました。

 

オペラなど総合芸術と呼ばれるもののように、音楽以外の要素と融合させることが、音楽にもプラスになるというか、また新しい表現が生まれるんじゃないかなって。それがWA!!をやろうと思ったきっかけです。

 

でも10月13日の当日の舞台でどういうことをやるのか、あまり言葉では具体的に説明できないので、とにかく観てもらうしかないね(笑)

下村:僕も知り合いに「WA!!っていったい何?」と聞かれますが、「とにかく観においで!」としか言えない部分はあります(笑)


確かに、音以外で伝える要素を増やすことで、お客さんにはわかりやすくなるのかなと思います。

玉木:んんん、なんか「わかりやすく」というのとは、ちょっと違うのかな。

「わかりやすく伝えよう」と思うと、「演奏者からの意図的なメッセージ」みたいなものになると思うけど、そうではなくて、「音のインスピレーションを増幅させるための演出」みたいな位置でできたら良いなって思ってます。

 

クラシック音楽は、本来はものすごく自由なものだと思います。聞いている人は、なにを感じても良いと思うし、他人の邪魔をしたり、空間を壊すようなことをしない限り、最大限自由に楽しむべきだと思います。いろんなことに思いを巡らせたり、ふと何かを思い出したり、小旅行のようなものだと思います。「演奏中に寝るなんて!」って怒る人がいるけど、演奏が気持ち良すぎて寝たのなら、演奏家にとっては成功じゃないかなとも思います。(笑)

 

心に響く音っていうのは、音自体が素晴らしいのと同時に、聞き手のその場の心境とか、その人の普段の生活で起こっていることとか、ものすごく個人的なところにまで向かっていくんだと思います。普段自分でも気づいていないこととか、思いもしないようなことが解放されたり、そういう心の深い部分に到達してこそ、音楽であり舞台なのかなと思います。

 

それが僕らが音楽を志す理由であり、舞台で演奏を披露し続けるのも、心が共鳴する体験を常日頃から探し求めているからだと思います。お客さんと演奏家が、そういった時間を共有できる空間を作り出すことが一番の目標です。

〜 WA!!メンバーへの思い 〜

下村:WA!!のメンバーは、僕を含めこれまでワークショップなどに参加した若手奏者がメインですね。メンバーへの思いや、この取り組みを通して彼らに伝えたいことはありますか?

玉木:本来音楽活動というものは、クリエイティブで自由なものであるはずなんだけど、特に20代とか若い世代のうちは、自由な演奏とか、自由な活動が許されない部分があると思うんだよね。

 

特に若いうちは、評価を獲得しないことにはこの世界では生き残れないから、「音楽=評価=仕事」として捉えてしまいがちなんだと思います。来たる勝負の日に備えて、日々地道な努力を重ね、訓練に訓練を積む。それ自体は僕も常に通っている道だし、どんな音楽家でもそういった部分は一生あると思います。確かに音楽は職業だし、評価を求めたり、ゴールを求めることはそれぞれの使命ではあります。

 


でも、本当は音楽について、自由な姿勢でいられるべきなんじゃないかなと思っています。音楽家なんだったら、「音楽表現とピュアな視点で向き合う」「今の自分がどんな人生を生きていて、これから先はどう生きていきたいのか」「一人の人間として、音楽を通して一体何がやりたいのか」っていうのを舞台で表現しないといけないように思います。それができたら、普段コツコツ頑張っている部分にも絶対良い影響が生まれると思うし。そういった機会を若い人に持って欲しいと思うので、「一緒に取り組もう」とみんなを誘いました。

~ 入手杏奈さんとの共演 ~

下村:WA!!デビュー公演のゲスト・入手杏奈さんのご紹介をお願いします。

玉木:杏奈さんとは、昨年夏、近藤良平さん演出の「兵士の物語」で共演しました。その時にダンサーの皆さんの様子を見ていて「すごい!これは面白いな!」と思ったんだよね。

 

僕らクラシック音楽の演奏家には、「楽譜」という確固たる地図のようなものがあって、楽譜が絶対的な役割を果たしています。楽譜に書かれた情報を読み解き、どう演奏するのかを決める。逆に、楽譜に書かれていないことは意図に反するのでやらないし、楽譜を勝手に書き換えることもしない。クラシック音楽の大前提のルールだと思います。

 

それが、コンテンポラリーダンスを見ていると、そうした「縛り」みたいなものがないような感じがしました。


僕らが楽譜を読むとき、「譜割り」「強弱」「調性」「速さ」なんかの情報を、割と数学的に読み解いている部分があるけど、そのときのダンサーの皆さんは「今、こんな音が聞こえたよね!じゃあこういう動きをしよう!」というアプローチで、それが「すごいな!」と思ったんです。

 

杏奈さんの踊りはすごく表情豊か。いろいろな動作に繊細な表情を感じました。優雅な動き、しなやかな動き、力強い動き、かと思えば、見てて笑ってしまうようなコミカルな動きだったりとか。体の動きで作る表情の豊かさというのは、こんなにもすごいものなのかと感じました。

 

トロンボーンは男声の音域なので、普通に考えると男性が踊る方が想像しやすいのかもしれないけど、トロンボーンたくさんに対して女性一人が踊るというのは、逆に面白いんじゃないか?と思ったので、杏奈さんにお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。

下村:僕も改めて、杏奈さんがデビュー公演に相応しいゲストではないかなと思っています!

〜 WA!!デビュー公演へ来られるお客さまへ 〜

下村:最後にお客さまへメッセージをお願いします。

玉木:まだ内容を練っている部分がかなりありますが、本当にいろんなものが飛び出すと思います!

ただ「いきなり舞台に引っ張り出されたらどうしよう?」みたいなドッキリはないので、ぜひ安心してお越しください(笑)

 

ホール内を振動する音、その空間の雰囲気に浸りながら、自由に楽しんでいただけたら。音が消えた後でも、何かいつまでも心に響くものがあったら嬉しいですし、公演を通して僕らのことを身近に感じていただけたら、さらに言えばWA!!というグループや、若手メンバーのファンになっていただけたら、そんな嬉しいことはありません。

 

「クラシック音楽って学校の授業みたいと思ってたけど、実はこんなに楽しいものなんだ」って思ってもらえるような舞台になればと思いますし、トロンボーンを吹かれる方も、トロンボーンを全然知らない方も、魅力的な音色、魅力的な楽器だなと感じてもらえるような演奏がお届けできればと思っています。ぜひ会場でお会いしましょう!